1. HOME
  2. 学会紹介
  3. 会長挨拶

ABOUT US

学会紹介

会長挨拶

President greetings

朝鮮族研究学会会員の皆さま

 

本学会第Ⅸ期(2024.1.1-2025.12.31)会長をお引き受けした鄭雅英です。日本生まれの在日朝鮮人2世(韓国籍)で、立命館大学の教員(2023年度末に定年、現在特任教授)です。

この間、会員各位による本学会諸活動への積極的な参加・協力と、権香淑前会長をはじめ前期理事会、事務局を担当された方々の尽力に、あらためて感謝の意を表します。2020年に始まった新型コロナ感染症拡大に伴う様々な社会的制約から、ようやく解放されつつある昨今ですが、本学会としてもコロナ以前の時機に劣らぬ活発な学術活動を目指す所存です。

日本における中国朝鮮族研究は、1985年延辺大学に長期滞在された故大村益夫先生(早稲田大学教授)を嚆矢とします。大村先生は長く不明だった詩人尹東柱の墓所を龍井の丘で発見されたばかりではなく、親交を結んだ金学鉄作家をはじめ朝鮮族文学の世界を日本や韓国に広く知らしめる大きな学術的功績を残されました。このとき大村先生が雑誌『季刊三千里』に連載し延辺の暮らしを興味深く紹介した「中国延辺生活記」の影響は大きく、1990年を前後して一定数の日本人や在日朝鮮人が朝鮮族の歴史文化・社会に関心を寄せ、留学ほかの形で延辺など朝鮮族居住地を訪ね研究対象として意識するようになりました(私もその一人です)。一方、1980年代の日本で徐々に増え始めた朝鮮族留学生の数は1990年代以降に急増し、日本の大学・大学院で学んでから就職する人も現れるようになりました。延辺大学などの出身者による集まりを経て、本学会の前身である中国朝鮮族研究会が東京で発足したのは1999年でした。爾来四半世紀、朝鮮族研究のネットワークは今や中国、韓国、日本のみならず世界各国に広がっており、専攻分野を問わず日本の大学で教鞭をとる朝鮮族研究者の姿も、珍しいものではなくなっています。

朝鮮族研究をめぐるこうした環境変化を前提に、今期における本学会の当面課題を、以下のように考えます。

一つ目は何よりも、従来に引き続き学術大会、各種研究会の開催と学会誌の発行を地道に積み重ね、日本の地で朝鮮族関連の学術活動に従事する研究者に、より質の高い研究と議論・研鑽の場を提供することです。今期はとりわけ、若手研究者のさらなる跳躍を応援できる機会を多く作っていきたいと考えています。

二つ目は、朝鮮族研究の広がりに応じて、研究者のネットワークをさらに拡充させることです。本学会は、中国を除けば朝鮮族研究の拠点としてかなり長い経歴を有していますが、コロナ感染症を奇貨としてオンラインで研究会の場を結び、多くの境界を軽々と飛び越えて共有できるようになったことは、国際的連携を志向する本学会にとって祝福に値します。対面による議論を重視しながらも、オンラインを活用して、より広い研究者ネットワークの構築と、本学会がその一拠点となることを目指します。

三つ目は、本学会も「アカデミア」という象牙の塔にこもることなく、その研究成果や議論のプロセスを広く社会と共有することです。2019年に発足した在日本中国朝鮮族連合会の急速な発展は目を見張るものがあります。日本社会に着実に根を広げる朝鮮族コミュニティを中心に中国、日本、朝鮮半島ほかの地で生きる人々との相互理解増進こそ、地域における平和と友好関係構築のかなめにほかなりません。さまざまな出自の研究者が集まる本学会は、学術活動を通じた社会やコミュニティ間の相互理解に側面的な支援を図ることが可能です。

以上、今期会長としての課題をいくつかあげましたが、これにとどまらず本学会は更にさまざまな学術活動にチャレンジする潜在力を秘めています。各会員におかれましては、なにとぞ従来にも増して諸活動への積極的な参加をいただくことで、本学会に力をお貸しくださいますよう衷心よりお願い申し上げる次第です。

 

                    2024年2月記