会長挨拶
President greetings
朝鮮族研究学会会員の皆さま
朝鮮族研究学会第Ⅹ期(2026.1.1-2027.12.31)会長を拝命いたしました慶應義塾大学の呉茂松(オムソン)と申します。この間、会員各位による本学会諸活動への積極的な参加・協力と、鄭雅英前会長(Ⅸ期)をはじめ前期理事会、事務局を担当された方々の尽力に、あらためて感謝の意を表します。
鄭雅英前会長の挨拶文からの引用になりますが、「日本における中国朝鮮族研究は、1985年延辺大学に長期滞在された故大村益夫先生(早稲田大学教授)を嚆矢とします。大村先生は長く不明だった詩人尹東柱の墓所を龍井の丘で発見されたばかりではなく、親交を結んだ金学鉄作家をはじめ朝鮮族文学の世界を日本や韓国に広く知らしめる大きな学術的功績を残されました。このとき大村先生が雑誌『季刊三千里』に連載し延辺の暮らしを興味深く紹介した「中国延辺生活記」の影響は大きく、1990年を前後して一定数の日本人や在日朝鮮人が朝鮮族の歴史文化・社会に関心を寄せ、留学ほかの形で延辺など朝鮮族居住地を訪ね研究対象として意識するようになりました。一方、1980年代の日本で徐々に増え始めた朝鮮族留学生の数は1990年代以降に急増し、日本の大学・大学院で学んでから就職する人も現れるようになりました。延辺大学などの出身者による集まりを経て、本学会の前身である中国朝鮮族研究会が東京で発足したのは1999年でした。爾来四半世紀、朝鮮族研究のネットワークは今や中国、韓国、日本のみならず世界各国に広がっており、専攻分野を問わず日本の大学で教鞭をとる朝鮮族研究者の姿も、珍しいものではなくなっています」
これまで私は、当事者として、朝鮮族の主体性と固有性、さらに模索可能な公共性について思索しており、その過程で、本学会員のご研究から多く学ばせていただきました。とはいえ、当事者としての即自性を乗り越え、客観的に自己を分析し、批判する自信がなかったため、朝鮮族研究には足を踏み入れておりませんでした。権香淑会長(Ⅷ期)に続き、2025年末に朝鮮族研究学会の「理事」に再度指名されるにあたり、私は「経験論」、「心情倫理」、「礼」や「義」でもない、ある種の「理」に近寄るための「事」ができればと思いました。
第Ⅹ期学会運営にあたり、朝鮮族研究学会という活動趣旨に立脚して、「全日本中国朝鮮族社会」をも研究対象にしながら「慣性的な観念論と経験論」に対する批判と「方法論に対する問題提起」を行い、朝鮮族研究の普遍的な価値を模索する組織にしていきたいと思います。具体的には、三大会務―研究発表会、年次大会、『朝鮮族研究学会誌』の刊行に加え、定例勉強会を復活させ、学会内外がつながる知的交流のプラットフォームを構築したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
呉茂松(慶應義塾大学)